第13号 悩ましい脳(のう)
- 公開日
- 2021/04/20
- 更新日
- 2021/04/21
校長室より
1限目にグラウンドを使って2年生が保健体育の学習をしていました。
授業開始後、体力づくりとして、腕立て伏せや腹筋などのサーキット・トレーニングが始まりました。
大型タイマーを使って自分の記録をファイルに書き留めて、自分の成長を数字で観られるように工夫されています。
トレーニング後、「これから、グラウンドを2周走ります」と、指導者から説明がありました。グラウンドを走るときに、記録用紙が飛んでいかないように、指導者が声をかけています。「必ず、体育実技の本をファイルに挟んで、飛んでいかないようにしておきましょう」。きっと、今まで記録用紙を飛ばしている生徒を何人も見ているからの指示でしょう。
また、グラウンドを走るときは新型コロナウイルス感染症対策のため、他の人との距離を意識しながら走ルようにも声かけをしています。特に、前後は2mはあけるように、注意喚起されていました。安心・安全が基盤となっての学校教育です。
校舎内に入っても、各教室では様々な学習活動が展開されています。
そんな様子を見て回っていて、ふと、想像します。
朝、登校するとき眠そうにしている生徒は、よく眠れていないのかな?
眠れないような心配事か、逆にうれしいことがあったのかな?
もしかしたらテレビやデジタル機器を利用する、スクリーン・タイムが長いのかな?
妄想はどんどん膨らみます。
特に、今日のような青空の下で身体を動かしている生徒を見ていると、朝の登校の様子と、家庭での生活の様子とが、なぜか妄想でつながります。
昨年の11月20日に、アンディシュ・ハンセン氏の「スマホ脳(新潮新書)」という書籍が発行されました。最新研究が示す恐るべき真実として、デジタル時代に対する危惧を伝えています。詳細は読んでいただきたいのですが、例えば、デジタル機器が若者の睡眠時間を減らし、集中力を低下させ、孤独感を高め、さらにデジタル依存状態にすることを、根拠や事例を基に述べています。なかなかに衝撃的な内容でした。動画でiPadベイビーを初めて観たときの衝撃と似ていました。
文章の最後にはアドバイスとして、デジタル機器の利用時間を制限し、紙の書籍を読んだり、手で書いたりする教育が大切なことや、散歩やランニングなどの心拍数を上げる運動をすると集中力が高まることを教えてくれています。
今年度から本格的に一人1タブレットの学習がスタートしますが、学校教育においても、家庭教育においても、デジタル機器の利用については細心の注意を払わなければと考えさせられます。特に、脳の発達段階にある子供たちにとって、その影響は深刻だと考えられるのでなおさらです。授業において、メリハリをつけた使い方をしないと、集中して学習に取り組むことが難しくなる可能性があります…。これは、学習効果が落ちることを意味します。
青空の下、それぞれの表情でグラウンドを走る生徒や、各教室でそれぞれの教科の学習に本気で根気よく取り組む生徒たちを見ながら、大人の責任を痛切に感じます。
この生徒たちのよりよい成長のために、どのようにデジタル機器を利用するのか、大人はその危険性に十分留意しながら、有効な方法を工夫することが求められています。
悩ましいことです。