中庭

学校日記 school diary

主体的学び no.639

公開日
2023/11/14
更新日
2023/11/14

校長室より

先日、わずかな晴れ間をねらって、2年生が屋外での気象観測を行っていました
自分たちで考えた方法での気象観測に取り組んでいます
あるグループは風力・風向をティッシュペーパーを使って測定しようとしていました
何とも楽しそうに学習に取り組む姿に、こちらもうれしくなります

そんな姿を見ていたら、日本時間の9月15日 に発表された「第33回イグノーベル賞」を思い出しました
御存じの方も多いでしょうが「イグノーベル賞」は、権威と知名度のあるノーベル賞のパロディとして、1991年に「風変わりな研究の年報」誌の編集長、マーク・エイブラハムズ氏によって創設されました
例年、本家ノーベル賞の1ヶ月ほど前に発表され、受賞の要件は「人々を笑わせ、人々に考えさせた業績」となっています
単なるおふざけではなく、研究手法の斬新さや現実性等、予想外のインパクトがある研究が受賞するので、毎年発表を楽しみにしてます
副賞は、「ノーベル賞受賞者のサイン入りイグノーベル賞の賞状」「賞金10兆ドル」「トロフィー」ですが、10兆ドルはアメリカドルではなくシンバブエドルであったり(※シンバブエドルは2015年には通貨として失効している・・・)、トロフィーは自分で組み立てるものであったりと徹底されています

今年の10賞と授賞理由は次の通りです
○化学・地学賞:
 多くの科学者が岩石を味わうのが好きな理由を説明した
○文学賞:
 1つの単語を何度も何度も何度も〜、繰り返した時に感じる感覚を研究した
○機械工学賞:
 死んだクモをグリッパーとして再利用した
○公衆衛生学賞:
 排泄物を監視し迅速に分析する装置「スタンフォード・トイレ」の発明した
○意思疎通学賞:
 倒語を得意とする人々の精神活動を研究した
○医学賞:
 人の鼻の穴にはそれぞれ同じ本数の鼻毛があるのかどうか死体で数えた
○栄養学賞:
 電気を流した箸やストローが食べ物の味をどのように変えるのかを調べた
○教育学賞:
 教師と生徒の退屈を統計的に研究した
○心理学賞:
 街頭で誰かが上を向いていたら、どれだけの人が立ち止まり上を向くかを調べた
○物理学賞:
 ヨーロッパカタクチイワシの交尾で海水がどの程度かき混ぜられるのか測定した

当時、マスコミにも大きく取り上げられましたが、栄養学賞を受賞したのは、日本人の宮下 芳明 氏、中村 裕美 氏でした
電気が流れる箸やストローと言われても想像できにくいですが、世界中で問題となっている「塩分の過剰摂取による高血圧」等の解決策をもたらすかもしれないすごい研究です

また、教師としては教育学賞も興味深いです
生徒が退屈であることは生徒の学習意欲を低下させますが、生徒の学習意欲の低下を起こすのはなぜか?
教師が退屈にしているだけでなく、教師が「退屈にしているように見える」ことも関係することが解明されています
教師が退屈にしているように見える場合、生徒もより強く退屈を感じるとのこと
これは、教師が退屈そうだと生徒に感じさせることが、生徒の退屈を招き、学習意欲を低下させ、更に授業を退屈にさせる、という負の連鎖が起こる可能性があるということです
だから、教師は自分が授業に退屈しているような姿勢を見せないことで、生徒の退屈さを防ぎ、学習意欲の低下を防ぐ可能性があるということです
ただし、教師がいくら熱心でも、生徒にとってはそうは感じないこともあることも解明されたので、生徒による教師の退屈度合いの評価は必ずしも正確ではないことには注意が必要であり、場合によっては教師の空回りとなる恐れがあることに留意が必要でしょう

「なぜ、こんな研究をしたのか?」と思えるものばかりなのですが、応用技術への可能性であるとか、その業界へのインパクトであるとか、イグノーベル賞が注目される理由はここにあると感じます
「すぐに役に立つ」といった考えで物事を評価するのではなく、一見するとムダに思えるようなことについても、本気・根気・元気に取り組むことは、よりよい未来につながると改めて私は思うのです
そこに無駄はない・・・

どうすればよいかよく考え、実際に試し、その結果を考察・評価し、課題解決に向かう
冒頭の理科の授業の出中生の表情にも主体的に学ぶ姿勢を感じたことが、うれしかった理由だったのかもしれません

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