小難しい話 no.519
- 公開日
- 2023/05/16
- 更新日
- 2023/05/20
校長室より
no.517の生徒総会の記事で、おわりの部分に「素数」に関することを書いたので、「素数とは何?」との質問がありました
学ぶ場であるよりよい学校環境として、「分からないことを自然に問える」ことを大切にしたいわたしにとって、とてもうれしいことでした
また、わたしの文章を読んでくれていることがストレートに分かって、とてもうれしかったです
「素数」は中学校の数学では、素数とは何かを学びますが、詳しく習いませんから、純粋な疑問でしょう
おとなも、素数と出会わなかった人がいるでしょうし、出会っていたとしても興味がなければ忘れている人もいるでしょう
簡単に説明すると、「素数とは、2以上の整数のうち、1と自分自身でしか割り切ることができない数」です
例えば、5は3番目の素数です
5は1と自分自身(5)でしか割り切ることができません
素数は1番目から順に、2、3、5、7、11、13、17、・・・と、続きます
他とは違ったものに、なぜか心が惹かれることはありませんか
素数は、わたしにとってそのひとつです
素数は、不思議な数なのです
その1:法則性のないバラバラ感
先にも書きましたが、2、3、5、7、・・・と続く素数ですが、100番目や1000番目の素数は何かと考えるとき、解を求めるための公式はありません
出現する規則性がないので、公式をつくることができないのです
もしかすると、現代の数学のレベルがまだその法則性に気づけていないだけかもしれませんが、過去の偉大な数学者や、AI・スーパーコンピュータなどのテクノロジーをもってしても、今はまだ見つけられていません
その2:素数を見つける方法は、あるにはある
次の素数が何かと考えるための規則性はなく、まだ法則は見つけられていませんが、求めることはできます
手あたり次第に、素数の条件に合うかどうか、計算すればよいのです
ただ、やはり賢い人はいるもので、効率的に素数を見つける方法は既に考え出されています
「エラトステネスの篩(ふるい)」という方法です
この方法は、単純作業をただただ繰り返す、消去法です
調べたいすべての整数を表にします
表ができたら、最初は2の倍数を消します
ただし、2のみ残しておきます(※2は素数だから)
次に3の倍数を消します
ただし、3のみ残しておきます(※3は素数だから)
4はすでに消えています(※2の倍数だから)
次に、5の倍数を消します
ただし、5のみ残しておきます(※5は素数だから)
・・・・・
と、いうことを続けていくと、最後に素数だけが表に残ります
ふるいにかける如く、ただひたすらに地道に作業するのが、「エラトステネスの篩(ふるい)」なのです
この方法は古代ギリシャの数学者、エラトステネスが考えました
2000年以上前(紀元前276年〜紀元前194年)ですが、今でも「エラトステネスの篩(ふるい)」よりも効率的な方法はないようです
スーパーコンピュータを使って素数を見つけるとにしても、結局、素数の倍数を消していくという計算を繰り返しているだけです
その3:見つけにくいから利用できる
素数を見つけることはとても大変です
だからこそ、利用価値があると考える賢い人がいます
デジタル・データの情報を守るための暗号化です
例えば、
1万番目の素数は104,729です
そのひとつ前、9,999番目の素数は104,723です
このふたつの素数をかけると、10,967,535,067となります
単純な計算です
ただし、この逆のこと、
10,967,535,067は、ふたつの素数を掛けたものですが、そのふたつの素数は何?と、問われてたら、そのふたつの素数を見つけ出すことはなかなかに難しいです
桁の大きい数字になればなるほどスーパーコンピュータでも難しいでしょう(時間がかかる)
現代、このことを利用してデータの暗号化を行っています
その4:素数を使う蝉(セミ)もいる
セミは幼虫として10年以上の間、地中で暮らし、羽化して生涯終末の数日間だけ地上に出て、成虫としてその生涯を終える昆虫です
アメリカに、羽化の周期が正確に13年や17年毎のセミが生息しているそうです
13と17は素数なので、このセミは「素数ゼミ」と呼ばれています
そして、13年ごとに羽化するのは主にアメリカの南部に生息する素数ゼミで、17年ごとに羽化するのは北部に生息する素数ゼミです
素数の倍数で羽化することで、天敵が大量発生する周期と一致しないようになります
また、異なる種との交配が避けられ、種が保存されます(雑種にならない)
素数セミが考え抜いた結果か、誰かの仕業かは分かりませんが、不思議です
結果的に、素数セミは素数の特徴を巧妙に利用しているわけです
その5:まだまだ、素数は未知
突然ですが問題です
問1:1〜9までの数字を1回ずつ使って素数は作れるか?
答え:「作ることは、できません」
さて、なぜでしょう????
問2:次の数字のうち素数でないものはどれ?
31
331
3331
33331
333331
3333331
33333331
333333331
答え:最後の「333333331」です
他の数はすべて素数です
さてなぜでしょう?????
ああ、いつも以上に長く、そして難解な文章になりました
数学教師ではないのですが、素数になぜか惹かれてこの有様です
先日から、校長室前の掲示は、アインシュタインの言葉になっています
学べば学ぶほど
自分がどれだけ無知であるかを思い知らされる
自分の無知に気づけば気づくほど
より一層学びたくなる
やはり、脳は不思議です