中庭

学校日記 school diary

伝える no.546

公開日
2023/06/23
更新日
2023/06/23

校長室より

朝、各学級では音声であったり文字であったり担任の個性に応じて、今日の日程のことや諸々の想い等が伝えられます(※上写真は3年生のとある学級の朝の会の様子です)
今日から始まる期末考査に向けて、担任の思いが溢れています

伝えることのねらいや内容、方法はいろいろですが、その中には集団が時間を超えて未来へ向けてよりよく進むために必要なこともあると考えます
歴史を学ぶこともそうであり、温故知新は伝えること・伝わることの重要性を表す言葉のひとつだと思います

今日、6月23日は「慰霊の日」です
沖縄県糸満市摩文仁の平和祈念公園で「令和5年沖縄全戦没者追悼式」が開催されます
一般参列者の入場は4年ぶりです
太平洋戦争における沖縄戦を体験した人は沖縄県の人口の1割を切ったという報道があります
3年生が訪れ、G7広島サミットでも各国首脳が訪れた広島平和記念公園
ここでの被爆体験者も年々減っており、修学旅行では大学生が伝承者としていくつかのグループを案内してくれました
これも伝えることの工夫です

人間は想像することができます
想像が創造につながります
そのために、歴史を伝える
想いを伝える

本日の式典で朗読される、高校3年生、平安名さんの詩を全文紹介します

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2023年度沖縄全戦没者追悼式
平和の詩(原文のまま、沖縄県平和祈念資料館提供)
「今、平和は問いかける」
  私立つくば開成国際高等学校3年 平安名 秋

夏六月
溶けかけたアイスを手に走り出す
緑萌ゆるこの島の昼下がり

礎に刻まれた「兄」に
まるであの日のように
そっと触れるおばぁの涙は
陽炎が登る摩文仁の丘に
ただ果てしなく広がっていく

その涙は体を包み込み
私を「あの日」へといざなう

限りないこの空は
何を覚えているのだろう
涙に満ちたおばぁの瞳は
何を語りかけているのだろう

七十八年前の
あの日
あの時
かけがえのない
たったひとつの命が
憎しみと悲しみの中で
散っていった

名も無き赤子の
微かな
微かな泣き声は
震える母の手によって
冷たく光の無いガマの中で
儚く消えていった

幾多もの砲弾が
紺碧の海を黒く染める鉄の嵐となって
この島に降り注いだ

戦争が起きる前
そこには日常があった

私達と同じように
原っぱを駆け回り
友達とおしゃべりをする
みんなで暖かいご飯を食べ
時には泣き
時には笑い
時には「ありがとう」を伝える

そんな今と変わらない日常が
平和が
そこにはあった

平和は不確かで
脆く崩れやすい
いつもすぐそばにあるのに
いつのまにか消えていく

おばぁの涙は
摩文仁の丘に永遠(とわ)に灯る平和の火は
今、私達に問いかける

平和とは何かを
私達に出来ることは何かを

私は過去から学び
そして未来へと語り継いでいきたい
おばぁの涙を
沖縄の想いを

かけがえのない人達を
決して失いたくはないから

今日も時は過ぎていく
いつもと変わらずに

先人達が紡いできた平和を
次は私達が紡いでいこう

そして世界に届けていきたい
平和を創り
守っていく
この沖縄の「チムグクル」を
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「チムグクル」とは(沖縄の方言で、「心」「精神」という意味です
わたしは一度も沖縄の地を踏んだことがありません
生きているうちに一度は訪れてみたい場所です
そして、現在の日本の平和の礎となった人々に、その場で哀悼の意を表したいと思うのです

毎年、この追悼式で平和の詩が作者によって朗読されますが、2018年に、浦添市立港川中学校3年の相良倫子さんが読み上げた「平和の詩」は、とても強く印象に残っています
長くなりますが、この詩も紹介します
題名は「生きる」です
詩の内容はもとより、追悼式での7分半に及ぶ力強い朗読も圧巻でした
※ネットでも動画を観ることができます

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2018年度 沖縄全戦没者追悼式
平和の詩(原文のまま、沖縄県平和祈念資料館提供)
「生きる」
  浦添市立港川中学校3年 相良 倫子

私は、生きている。
マントルの熱を伝える大地を踏みしめ、
心地よい湿気を孕んだ風を全身に受け、
草の匂いを鼻孔に感じ、
遠くから聞こえてくる潮騒に耳を傾けて。

私は今、生きている。

私の生きるこの島は、
何と美しい島だろう。
青く輝く海、
岩に打ち寄せしぶきを上げて光る波、
山羊の嘶き、
小川のせせらぎ
畑に続く小道、
萌え出づる山の緑、
優しい三線の響き、
照りつける太陽の光。

私はなんと美しい島に、
生まれ育ったのだろう。

ありったけの私の感覚器で、感受性で、
島を感じる。心がじわりと熱くなる。

私はこの瞬間を、生きている。

この瞬間の素晴らしさが
この瞬間の愛おしさが
今と言う安らぎとなり
私の中に広がりゆく。

たまらなく込み上げるこの気持ちを
どう表現しよう。

大切な今よ

かけがえのない今よ

私の生きる、この今よ。

七十三年前、
私の愛する島が、死の島と化したあの日。
小鳥のさえずりは、恐怖の悲鳴と変わった。
優しく響く三線は、爆撃の轟に消えた。
青く広がる大空は、鉄の雨に見えなくなった。
草の匂いは死臭で濁り、
光り輝いていた海の水面は、
戦艦で埋め尽くされた。
火炎放射器から吹き出す炎、幼子の泣き<声、
燃え尽くされた民家、火薬の匂い。
着弾に揺れる大地。血に染まった海。
魑魅魍魎の如く、姿を変えた人々。
阿鼻叫喚の壮絶な戦の記憶。

みんな、生きていたのだ。
私と何も変わらない、
懸命に生きる命だったのだ。
彼らの人生を、それぞれの未来を。
疑うことなく、思い描いていたんだ。
家族がいて、仲間がいて、恋人がいた。
仕事があった。生きがいがあった。
日々の小さな幸せを喜んだ。
手を取り合って生きてきた、私と同じ、人間だった。
それなのに。
壊されて、奪われた。
生きた時代が違う。ただ、それだけで。
無辜の命を。あたり前に生きていた、あの日々を。

摩文仁の丘。眼下に広がる穏やかな海。
悲しくて、忘れることのできない、この島の全て。
私は手を強く握り、誓う。
奪われた命に想いを馳せて、
心から、誓う。

私が生きている限り、
こんなにもたくさんの命を犠牲にした戦争を、
絶対に許さないことを。
もう二度と過去を未来にしないこと。
全ての人間が、国境を越え、人種を越え、
宗教を超え、あらゆる利害を越えて、
平和である世界を目指すこと。
生きる事、命を大切にできることを、
誰からも侵されない世界を創ること。
平和を創造する努力を、厭わないことを。

あなたも、感じるだろう。
この島の美しさを。
あなたも、知っているだろう。
この島の悲しみを。
そして、あなたも、
私と同じこの瞬間(とき)を
一緒に生きているのだ。
今を一緒に、生きているのだ。

だから、きっとわかるはずなんだ。
戦争の無意味さを。本当の平和を。
頭じゃなくて、その心で。
戦力という愚かな力を持つことで、
得られる平和など、本当は無いことを。
平和とは、あたり前に生きること。
その命を精一杯輝かせて生きることだということを。

私は、今を生きている。
みんなと一緒に。
そして、これからも生きていく。
一日一日を大切に。
平和を想って。平和を祈って。
なぜなら、未来は、
この瞬間の延長線上にあるからだ。
つまり、未来は、今なんだ。

大好きな、私の島。
誇り高き、みんなの島。
そして、この島に生きる、すべての命。
私と共に今を生きる、私の友。私の家族。

これからも、共に生きてゆこう。
この青に囲まれた美しい故郷から。
真の平和を発進しよう。
一人一人が立ち上がって、
みんなで未来を歩んでいこう。

摩文仁の丘の風に吹かれ、
私の命が鳴っている。
過去と現在、未来の共鳴。
鎮魂歌よ届け。悲しみの過去に。
命よ響け。生きゆく未来に。
私は今を、生きていく。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

今、できることは何か・・・
まずは感じること、そして事実を知ることからすべてが始まると思います

  • 626334.jpg

https://tonami.schoolweb.ne.jp/1620011/blog_img/8197032?tm=20240808123208