中庭

学校日記 school diary

教えるもの no.479

公開日
2023/03/17
更新日
2023/03/20

校長室より

終りが見えなかったり、終わりのないものに立ち向かったりすることは、なかなかにエネルギーがいります
その中には、避けては通れないものも存在します


最近、高校男子バスケットボール界で9度の日本一になった福岡第一高校バスケットボール部で、創部に関わって現在も監督を続ける井手口 孝 氏のお話に触れる機会がありました
創部2年目で福岡県ベスト8、5年目でインターハイ出場と実績を残されたことで、「自分がよい指導者だからだ」と、驕り高ぶる気持ちがあったことを回顧されています
しかしそれは大間違いで、指導者としての実力不足を痛感させられた出来事が2000年に起こります
バスケットボールの本場であるアメリカで、日系人として初めてジョン・ウッデン アワード(※全米大学コーチとして最高の賞)を受賞されたデイブ・ヤナイ コーチの指導を受けるため、選手と共に渡米されたときのことです
2週間にわたる指導を受けたある日、ロサンゼルスで一番の強豪校との練習試合が組まれます
全く歯が立たず、選手たちも心が折れかけていた時、Mというエース選手がミスをして相手にボールを取られ、そのまま速攻でシュートを決められます
Mは戻ってディフェンスをする気力もなく、その場に立ちすくしていたそうです
井手口 氏は自分なら「お前のミスだろ!自分で戻ってディフェンスしろ!!」と強烈に叱っただろうとその瞬間を回顧されています
このとき、デイブ コーチは片言の日本語でMに言います

M、お前はいい選手だ
いい選手はミスをしても一所懸命がんばる
なぜ、あなたはいい選手なのにそれをやらないのか

少し生意気で、ちょっとやそっとのことでは泣かない、根性のある選手だったMは、このデイブ コーチの一言で突然泣き出し、その後は人が変わったように相手に向かってハードディフェンスをし始めたそうです
この事実は井手口 氏にとっては衝撃であり、指導者として大きく変わるきっかけだったそうです
数年間ずっとそばにいた自分が気付けなかったことを、2週間の練習でデイブ コーチは気付き、一言で大きく成長させたのですから・・・
このことで、選手への言葉かけについて工夫するようになり、そのために選手たちをよく見るようになったと回顧されています
その結果が高校男子バスケットボール界で9度の日本一です
※インターハイ優勝5回(H16,H21,H28,R1,R4)、ウインターカップ優勝4回(H17,H2,H3,R1)

このエピソードはとても興味深く、深く考えさせられるものです
教育活動において大切なことです
当たり前のことなのですが、わたしも含めて本校ではできているだろうか、意識されているだろうか、と考えます

よりよい教育を目指すことに終わりはないのです
これは教育に限ったことではなく、「よりよい人生」としても、そこに終わりはないでしょう
まさしく、卒業生が式で合唱したRADWIMPSが歌う「正解」の歌詞、「制限時間はあなた(わたし)のこれからの人生」なのです

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