学校日記

家族というもの! 7/20 424号

公開日
2023/07/21
更新日
2023/07/21

校長室

 もうすぐ夏休み。子供たちは、家庭の団欒・地域での活動と課業中とは違った有意義な時間を過ごすことになると思います。「家族とは何か」子供たち自身が考え直す良い機会にもなると思います。私自身も同居する妻と両親、最近結婚して近くに別居する長男、まだ大学生でアパート暮らしをする次男に囲まれて、家族の在り方を日々考えています。PHP主催2022年度文科省後援第6回PHP作文甲子園優秀賞を受賞された高校3年生の藤田美音子さんの作品が良いヒントになると思いますので、紹介します。

 「うるさい。もういいよ」

 両親からの愛情が、当時は鬱陶しくて仕方がなかった。とにかく解放されたかった。だから、逃げるように全寮制の学校へ進学した。すぐに友達ができた。学校が終わっても寮でずっと一緒に過ごせる。気が済むまで語り、笑い、遊ぶ。お菓子を食べ過ぎても、苦手な野菜を残しても叱られることはない。最高だ。家になんて一生帰らなくてもいいとさえ思った。

 もちろん大変なこともあった。掃除、洗濯、身の回りの整理整頓。加えて、課題や部活動も両立しなければならなかった。でもしんどいのは自分だけじゃない。みんながいるから大丈夫。そう思い乗り切った。

 ある日、いつも一緒にいる友人とけんかをした。誰かに話を聞いてほしかった。とはいえ、相談できる相手はいなかった。それもそうだ。少人数で、狭く深い人間関係。話せばすぐに噂が広まる。あることないこと言われて、さらにこじれてしまうかもしれない。だからグッとこらえた。寂しかった。普段、あれだけ友達に囲まれているのに。いざというとき、自分は孤独なのだと実感した。

 夏休み。3カ月ぶりに実家へ帰った。何とも言えない安心感が訪れ、同時にどっと疲れが出てきた。何もする気が起きなかった。思いのほか、疲弊していたのだ。円満な関係を築くために、寮ではできるだけ「善い自分」を演じていたから。

 しばらくして母が私に尋ねた。「学校はどうなの?」すぐには答えられなかった。話したいことがあまりに多すぎて。あんなことがあった。こんな人に出会った。時系列なんて気にせず、ひたすら話した。両親は静かに私の話に耳を傾けてくれた。時折相槌を打ちながら、堰を切ったように語り出した私を優しく見つめてくれた。

 途中で、胸の奥底から何だか熱いものがこみ上げてきた。気付けば泣いていた。ありのままの自分をさらけ出せる。土台であり本拠地。それが家族なのだと知った。だから、改めて。お父さん、お母さん。いつもありがとう。

 一人暮らしを経験された方は、この作者のように家族の有難みを実感されたことは、おありになるのではないでしょうか。読者の皆さんはどんな感想をもたれたでしょうか。