学校日記

大人の矛盾をどう教える? 5/25 385号

公開日
2023/05/25
更新日
2023/05/25

校長室

 先日6年生の授業参観をしていると、ある男の子に尋ねられました。「校長先生、これだけ命が大切だと言われているのに、なぜウクライナでは今だに戦争を続けているのですか?」6年生ともなると、新聞やテレビでこれだけ報道されているウクライナ紛争を気にかけているのでしょう。答えるのに、戸惑ってしまう質問です。「人間は愚かしい生き物だから」「人間の欲望が引き起こす」と言っても、命の尊厳を尋ねる小学生への適切な答えになっているとは思いません。

 答えられない子供からの問いかけは、矛盾した言動を我が身に問いかけることもなく見過ごしている私たち大人への戒めかもしれないと子ども家庭教育フォーラム代表の富田富士也氏はおっしゃっておられます。私たちはすべてにおいて、完全、明快にはできない不完全な存在です。そのことへの自覚を促しているのではないでしょうか。とも付け加えておられます。

 私は、中学教師時代における我が子の子育てを次のように顧みます。「私は中学校教師として、進路指導の先頭に立って『脱偏差値』『相対評価ではなく絶対評価(他人と優劣を比較するのではなく個人内の伸びに着目)』を力説してきました。それなのに一方で我が息子を『受験戦争に』に駆り立てていたのです。かろうじて教員免許は取得してくれましたが、就職は民間企業の営業マン。まったく畑違いの仕事に就きました。しかし、顧客への接待を生き生き母に話す息子を見て妙な気持になります。」

 これからも、子供が指摘してくれる「大人の矛盾」をごまかして返答するのではなく、誠実な気持ちで思いをぶつけ合っていけたらと思います。